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原安三郎コレクション 広重ビビッド

2017.9月号

美術hiroba
美術館へ行こう! 
北九州市立美術館 
学芸員 長峰真奈美

 日本の風景を情緒豊かに描いた浮世絵の巨匠、歌川広重(1797〜1858年)は「名所絵の広重」と呼ばれ、生涯に数多くの浮世絵風景版画の名作を残しました。 
 このたび北九州市立美術館分館では、日本財界の重鎮として活躍した日本化薬株式会社元会長・原安三郎氏(1884〜1982年)が収集した約2000点に及ぶ浮世絵コレクションから、歌川広重晩年の傑作シリーズ《六十余州名所図会》と《名所江戸百景》を中心にご紹介します。彼が集めた秘蔵のコレクションは近年、その類いまれな質と量によって注目されるようになりました。同コレクションは貴重な「初摺(しょずり)」のなかでもとくに早い時期のもので、国内にも数セットしか存在しない逸品です。また、保存状態が極めて優れており、ほとんど退色のない濃密でビビッドな色彩を残しています。初摺の工程では広重と摺師が一体となって色彩や摺りを検討しながら進めており、広重の意思が隅々まで込められています。

歌川広重《六十余州名所図会 阿波鳴門の風波》1855年(後期展示)

 

 日本全国の名所を描いた《六十余州名所図会》は、五畿七道の68カ国および江戸の図と目録を合わせた計70図で構成された連作です。題材となる場所が全国各地に及ぶため、先行する多くの地誌・絵本類を参考に、広重独自の臨場感あふれる画面をつくり出しました。全図とも画面は縦長で、前景を大きく描き遠近を強調し、大胆なトリミングを施すなど、斬新な構図がとられています。さらに自然の変化を巧みに織り交ぜて描き、その土地の文化や信仰をも伝えながら、人々に旅への憧れを抱かせました。また、彫りと摺りの技術を用いてベロ藍(※)を効果的に駆使した作品は、「広重ブルー」と称され、海外の画家にも影響を与えました。

歌川広重《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》1857年(前期展示)

 

 広重が最晩年に手がけた《名所江戸百景》は、名所絵の集大成といえます。江戸の市中と郊外の景観を主題とした初代広重による118図、および二代広重による1図と目録を合わせた計120図からなる超大作です。江戸在住の広重が実際に足を運び、写生したものが基になっていると考えられ、広重が描く美しい名所絵は江戸の人々を魅了しました。高い視点から見下ろす俯瞰(ふかん)図や前景に印象的な素材を大きく描く大胆奇抜な遠近法、その他、さまざまな摺りの技法による表現など、晩年に至ってなお新しい試みが随所に見られます。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》1829〜32年(後期展示)

 
 本展では歌川広重のほか、葛飾北斎(1760〜1849年)、歌川国芳(1797〜1861年)らの希少な作品など約250点を前後期に分け、総入れ替えで展示します。開催にあたり、描かれた場所の現地取材を行い、作品と現在の写真を比較できる会場構成となっており、全国各地の名所を幕末三大絵師の浮世絵でたどります。鮮烈な色彩が目を引く「初摺」の浮世絵により、江戸時代の自然風土の美しさや、四季の移ろい、そこに生きる人々の姿をご堪能ください。

歌川国芳《近江の国の勇婦お兼》1831〜32年(前期展示)


※ オランダを経由して輸入されたベルリン発祥の発色鮮やかな青色の染料



Event
記念講演会
「旅する広重《六十余州名所図会》」

【日時】
 10月7日(土)午後2時〜同3時30分
  (開場同1時30分)

【講師】
 小池満紀子
 (中外産業株式会社美術担当、国際浮世絵学会理事)

【会場】
 北九州芸術劇場小劇場
 (リバーウォーク北九州6F)

【定員】
 150名(先着順、聴講無料)

Information
原安三郎コレクション 広重ビビッド

【会場】
 北九州市立美術館分館
 (リバーウォーク北九州5F)

【会期】
 9月16日(土)〜10月29日(日)
 ※会期中無休
 ※ただし、展示替えのため10月10日(火)は休館

〜展示作品総入れ替え〜
 前期:9月16日(土)〜10月9日(月・祝)
 後期:10月11日(水)〜10月29日(日)

【開館時間】
 午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)

【観覧料】
 一般1200円(1000円) 
 高・大生800円(600円)
 小中生600円(400円)
 ※リピーター割引:半券提示で1回限り団体料金より100円割引
 ※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金
  障害者手帳を提示の方は無料
  年長者施設利用証提示の方は2割減免

【お問合せ】
 093(562)3215