《サイロ》1950年 油彩/カンヴァス フランス、個人蔵 ⒸADAGP

美術

| 美術, 北九州市立美術館 分館, 学芸員 |

ヴラマンク展

2018.1月号

美術hiroba
美術館へ行こう! 
北九州市立美術館 
学芸員 山下理恵

 

私は、決して何も求めてこなかった。
人生が、私にすべてのものを与えてくれた。
私は、私ができることをやってきたし、私が見たものを描いてきた。

  世を去る2年ほど前、80歳のモーリス・ド・ヴラマンクは、『ARTS』誌に「私の遺言」と題した文章を寄せました。この3文は、その締めくくりの文章であり、彼の墓碑銘ともなっています。

モーリス・ド・ヴラマンク(1876 〜1958年)

 
 里見勝蔵や佐伯祐三ら日本人画家にも大きな影響を与えたモーリス・ド・ヴラマンクは、1876年、パリに生まれました。ヴァイオリン奏者、競輪選手という異色の経歴を経て、1900年ごろから本格的に画家としての活動を開始します。05年、サロン・ドートンヌ展の一室に集められた、若手画家による激しい色彩を用いた作品群は、「フォーヴ(野獣)」と呼ばれ、ヴラマンクはフォーヴィスム(野獣派)の主要な画家とし一躍有名になります。しかし、07年から早くも新たな表現を模索し始め、セザンヌの回顧展を契機に、その影響を大きく受けた作品を発表します。やがて、ヴラマンクは同時代に現れたキュビスム、ダダ、シュルレアリスムなどのすべての美術運動から距離を置きます。豊かな自然が広がる地に転居し、村に点在する古い邸宅や雪景色、小麦畑、積みわら、サイロ(飼料の貯蔵庫)といった身近な風景を叙情的に描きました。

《サイロ》1950年 油彩/カンヴァス フランス、個人蔵 ⒸADAGP

 
 フォーヴィスム期の激しい色彩、セザンヌに傾倒した時期に獲得した構成力、それらを経てたどり着いたヴラマンク独自の力強い表現は、我々を魅了してやみません。本展ではそこに至るまでの画風の変遷をお楽しみいただくとともに、優れた文筆家でもあった彼の言葉も併せて紹介します。絵画と言葉――それぞれの方法で、ヴラマンクはどのように自らを表現したのでしょうか。両者の間に密接な結びつきが感じられるものもあれば、そうでないものもあるかもしれませんが、観(み)ること・読むことによって、作品と作家本人を、より身近に感じられることでしょう。

私は、描くことに対して、喜びの源泉、留(とど)まることのない快感、非常に強い知的興奮を感じている。私は、空、樹木、雪、そして生命……に共感しているのである。

という描く喜びと、

内的様相をそれ自体の深みから表現し、人々に理解してもらうことがいかに難しいことか!
あらゆるものが乱雑に混ざり合うなかから、本当の感情を見分けて選びだし、筆やペンで表現することがいかに難しいことか!

 という描く苦悩とを、残された作品に表れた感情や情動、添えられた言葉から想像し、よりヴラマンクに親しみを覚えていただけることと思います。絵画と言葉の往還あるいは狭間(はざま)から見えてくる制作の裏側やヴラマンクの素顔を、どうぞお楽しみください。

《ラ・マンスリエール》1958年、リトグラフ 個人蔵 ⒸADAGP

 

Information
ヴラマンク展

【会場】
 北九州市立美術館分館
 (リバーウォーク北九州5F)

【会期】
 2018年1月4日(木)〜2月25日(日)
 ※会期中無休

【開館時間】
 午前10時〜午後6時
 (入館は午後5時30分まで)

【観覧料】
 一般1200(1000)円 
 高大生800(600)円
 小中生600(400)円
 ※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金
 障害者手帳提示の方は無料
 年長者施設利用証提示の方は2割減免

【お問合せ】
 093(562)3215