図1 ヤノベケンジ《GRAND SEED NEW “ORGA”》 1993年(1994年改変) 鉄、モーター、エンジンほか 北九州市立美術館蔵

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北九州芸術劇場×北九州市立美術館分館 vol. 5 「10万年の寝言」

2017.6月号

美術hiroba
美術館へ行こう! 
北九州市立美術館 
学芸員 清田幸枝

 北九州市立美術館分館では、北九州芸術劇場とのコラボレーション公演『10万年の寝言』を開催します。本企画は今年で5年目を迎え、これまでエドガー・ドガ、ジャン・ミシェル・バスキア、葛飾北斎、クロード・モネの作品を主題とした演劇作品が上演されました。演劇と主題となった美術作品も同時に鑑賞できるとあって、美術ファン、演劇ファンだけでなく各方面から大変ご好評をいただいています。コラボシリーズ第5弾となる今回のテーマは現代美術家・ヤノベケンジの《GRAND SEED NEW “ORGA(オルガ)”》(図1)です。5月号特集に続き、今号ではヤノベケンジの作品世界を少しご紹介します。

図1 ヤノベケンジ《GRAND SEED NEW “ORGA”》 1993年(1994年改変) 鉄、モーター、エンジンほか 北九州市立美術館蔵

 
 ヤノベケンジは1965年、大阪府に生まれました。幼いころからアニメや漫画、特撮、SF映画などに興味を持ち、美術大学に進学後もサブカルチャー文化を想起させるような造形作品を創り続けました。ノストラダムスの大予言など終末思想がささやかれ始めた1990年代。ヤノベは、世界の最終戦争に備え、自分の身を守るための「サヴァイヴァル」装置をテーマに、実機能を兼ねた大型彫刻作品を発表します。本作《ORGA》もまた、高さ3メートル近くの鉄でできた彫刻作品で、実際に作品の内部に入り、エンジン駆動によって上下に激しく揺さぶられながら大地と共鳴する装置として作られました。
 未来へ生き残るため「サヴァイヴァル」として、妄想の砦(とりで)を築いてきたヤノベに転機が訪れたのは1990年代後半に入ってのことでした。自身の創作の原点でもある幼少期に見た大阪万博跡地の「未来の廃墟(はいきょ)」の光景。この光景を追体験すべく、放射線防護服《アトムスーツ》(図2)を身にまとい、原子力発電所事故が起こった街、チェルノブイリを訪れます。そこでヤノベが目にしたものは、廃墟となった街とそこで暮らす人々の姿でした。あまりに厳しい現実を目の当たりにしたこの経験は、ヤノベに大きな意識の転換を与えることになります。 

図2 ヤノベケンジ《アトムスーツ・プロジェクト:保育園4・チェルノブイリ》1997年 北九州市立美術館蔵

 帰国後、これまでの制作スタイルであった「サヴァイヴァル」は、明るい希望を象徴するかのような「リヴァイヴァル=再生」へと次第に変化していきます。 

 イマジネーションあふれる作品を次々と展開し、実現していくヤノベケンジ。まるでSFの世界から現れたかのような特異な作品から、さまざまなイメージやストーリーが感じられるのではないでしょうか。今回の公演では《ORGA》を舞台上に設置し、ヤノベの世界観を新たな視点で捉えた三つのオムニバス短編演劇を上演します。さらに深化したコラボ企画をどうぞお楽しみください。



Event
◎公開プレビュー
公演に先駆けて、公開舞台稽古とトークイベントを開催
【日時】
 6月4日(日)午後4時

【会場】
 北九州市立美術館分館会場内

【ゲスト】
 ヤノベケンジ

◎アフタートーク
・ 各公演終了後に劇作家と美術館学芸員のアフタートークを行います
・ 6月8日(木)午後7時公演後にはヤノベケンジさんのゲスト出演を予定しています
※ イベントの詳細は美術館・劇場ホームページをご覧ください

Information
北九州芸術劇場×北九州市立美術館分館 vol.5
10万年の寝言

【日時】
 6月8日(木)午後7時
    9日(金)午後2時/午後7時
         10日(土)・11日(日)午後1時/午後4時
  ※各公演終了後、学芸員による解説あり

【会場】
    北九州市立美術館分館

【料金】
    一般1200円(当日1500円)
    ※未就学児入場不可

【お問合せ】
    北九州芸術劇場 
    093(562)2655