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上質な「笑い」

2019年5・6月号

演劇・舞踊

2019年4月26日

演劇hiroba
演劇の街は、いま
大塚恵美子演劇事務所
代表 おおつかえみこ

 ドラマの授業やワークショップをやっていると「笑いの質」についてよく考える。まだお互いに馴染(なじ)みのないグループや、人間関係がうまくいっていないグループは、演技をしている人(登場人物ではなく、その人自身)の失敗や、それによって困っている様子を笑うことが多いように思う(ちなみに、クラスメートや有名人といった安易な共通認識に頼ろうとする場合も、その集団に良くない緊張関係があることを示す場合が多い)。それに対して、相手の表現をきちんと受け入れる態勢が整っているグループは、誰かが演じている登場人物の葛藤や他の登場人物との関係性を面白いと思い、笑うことができる。
 前者が悪いわけではない。テレビのお笑い番組では、「誰かの失敗を笑う」タイプの笑いが横行しているからである。人々が多かれ少なかれその影響を受けてしまうのは仕方のないことなのだろう。しかし、少しさみしい気もする。
 演劇の中に登場する「笑い」となると「道化師」を思い出される方も多いと思う。支配階級の家で“魔除(まよ)け”のような存在であったり、階級が低いことを逆手にとって、王様や貴族たちに堂々と意見をしたり、政治に影響を与えた道化師もいたという。芝居においては、物語の進行をスムーズにするキーパーソンの役目を果たすことも多い。決してただの滑稽な愚か者ではないこの「道化師」のもたらす笑いは、現在の「弱者いじり」のものとは全く違うものだったように思う。
 最近「インプロ(即興劇)」のパフォーマンスを見る機会が多いが、やはり「失敗」を笑ってもらおうという姿勢が垣間見えるのが非常に残念に思う。本来の劇的な面白さはそこにはないと個人的には思うのだ。
 さて、今回は、そういった「笑い」に関して妥協のない作品を2作品紹介させていただきたい。偶然ではあるが、有名な原作をアレンジして上演しているところにも共通点がある。

劇団ヒロシ軍『カチカチ山』チラシ

劇団ヒロシ軍『カチカチ山』チラシ


 一つ目は「劇団ヒロシ軍」第15 回本公演『カチカチ山』(原作:太宰治/構成:永山智行(劇団こふく劇場)/演出:荒木宏志(劇団ヒロシ軍)/4月20・21日/北九州芸術劇場小劇場)だ。
 もともと太宰治が昔話を「太宰流」に仕立てたものを、さらに「ヒロシ軍流」にアレンジした作品だ。この劇団は、長崎県諫早市を拠点とし各地の演劇祭に積極的に参加、北九州芸術劇場主催の『劇トツ×20分』で、2017年、18年連続優勝した勢いのある劇団で、北九州にもファンが多い。コントのレパートリーも持っている彼らの「笑い」には、時にずしりと重い「笑えない現実」が見え隠れして興味深い。

「有門正太郎プレゼンツ」公演写真

「有門正太郎プレゼンツ」公演写真


 そして、二つ目は、これから上演される作品。「有門正太郎プレゼンツ」vol.6『アリプレ版ロミオとジュリエット「僕は死にますん」』(原作:W・シェイクスピア/作・演出:有門正太郎/5月14~16日/北九州芸術劇場小劇場)だ。
 “アリプレ”という愛称で呼ばれることの多いこの集団は“「くだらないことを面白く」「じいちゃんばあちゃんパパにママまで楽しめる作品」をテーマに作品作りを行う”ことを売りにした“コント集団”だ。しかし、単に笑わせるだけでなく、演劇的な仕掛けがしっかりとある。
 国内外で「笑うしかない」事件が多く起こる昨今、せめて劇場の中だけでも、心の底から「面白い」笑いにひたりたいものだ。


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