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中国での清張受容〈新境地〉の芽生え

2022年1・2月号

文学

2021年12月23日

文芸hiroba
清張アラカルト
北九州市立松本清張記念館
学芸担当主任 中川里志

 昨年開催した特別企画展『松本清張と東アジアⅡ』の話題もこれで3度目、食傷気味かもしれませんが、とっておきの情報をお伝えしますので、しばしお付き合いください。図録などで紹介できなかった、中国の清張受容の〈新境地〉についての報告です。 

 松本清張生誕100年の年(2009年)の3年後、中国では『日本の黒い霧』と『深層海流』が人民文学出版社から再刊(文潔若訳)され、同年『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇(たんぺん)コレクション』(新星出版社、以下『コレクション』)が翻訳出版されました。同書が、松本清張の「人と作品」を立体的に紹介した意味は大きいと思われます。またある意味でこの出版企画自体が、中国読者が清張作品の全体像を受け入れる段階に達していることを、証しているとも言えます。
 同年、北京読客図書有限公司(以下、読客)が『読客全球頂級暢銷小説文庫』(以下、『読客小説文庫』)の刊行を開始し、第1冊目の『日本を裏切った日本人』(「球形の荒野」)から第10冊までを、清張の長編作品が占めました。推理小説が主ですが、これほどまとまった翻訳出版はこれまでにはありませんでした。『コレクション』の出版と併せて、中国読者の清張受容意識の深化の一端を現しているように思われます。
 その後、2013年には自伝的作品『半生の記』が広西師範大学出版社から翻訳出版されました。同作は86年に安徽人民出版社から刊行済みですが、松本清張の半生の紹介は再読されることで、清張作品の理解を深めることが期待されます。
 20~21年までの間には、10の出版社から『聖獣配列』や『火と汐(しお)』などの13作品が翻訳出版されました。別に、18~19年に出版された読客の『読客外国小説文庫』と、17~20年に出版された人民文学出版社の『松本清張短経典系列(短編シリーズ)』は、とくに興味深いものです。
 前者の『読客外国小説文庫』は、『眼の壁』『水の肌』『夜光の階段』『黒革の手帖(てちょう)』『馬を売る女』が出版されていますが、前に出た『読客小説文庫』の10作品も現在発売中で、この『外国小説文庫』シリーズの中に組み込まれています。つまり読客は12~19年の間に清張の長編の代表作を15編翻訳出版し、現在そのすべてを『読客外国小説文庫』の名の下にシリーズ化して販売しているのです(写真1)。

写真1 『黒革の手帖』(『読客外国小説文庫』) 中国 2018

写真1 『黒革の手帖』(『読客外国小説文庫』) 中国 2018

 この長編シリーズと相補うように刊行されたのが、人民文学出版社の『松本清張短経典系列』です(写真2)。まず17~18年に、『西郷札』『駅路』『或る「小倉日記」伝』『黒地の絵』『張込み』『佐渡流人行』が翻訳出版されていますが、これは日本の新潮文庫の『傑作短編集(一~六)』の翻訳です。その続巻として20年に『憎悪の依頼』『眼の気流』『共犯者』の短編集が翻訳出版されています。

写真2 『或る「小倉日記」伝』(『松本清張短経典系列』) 中国 2017

写真2 『或る「小倉日記」伝』(『松本清張短経典系列』) 中国 2017

 このように清張生誕100年以降の、中国での清張作品の翻訳出版の跡を追ってみると、過去の出版状況に比べて、その翻訳された作品領域の広さと出版の集中度が際立っていることが分かります。『日本の黒い霧』などの現代史ノンフィクションが再刊され、『砂の器』などの社会派推理小説の代表作の新版が出版されています。自伝的作品『半生の記』が翻訳され、清張の「人と作品」を立体的に紹介する、宮部みゆき責任編集の『コレクション』のようなものも出版されました。この生誕100年の盛り上がりが耕した新開地に、『読客外国小説文庫』シリーズや『松本清張短経典系列』は芽吹いたのです。この芽吹きが、企画展で紹介した韓国の『清張ワールド・シリーズ』と同じように、「推理小説家でありノンフィクション作家であり歴史家」でもあり、また現代小説家、歴史・時代小説家でもある、松本清張の全体像を紹介する、本格的な清張受容へと着実に育つことが期待されます。

Information
北九州市立松本清張記念館
小倉北区城内2の3
093(582)2761
【常設展観覧料】
 (企画展観覧料を含む)
 一般600円 
 中高生360円
 小学生240円
【休館・開館時間】
 月曜日(月曜日が休日の場合は翌日)
 午前9時30分~午後6時
 (入館は午後5時30分まで)

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、施設の臨時休館、催しの中止・延期となる場合がございます。最新の情報は各施設のホームページをご確認ください


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