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企救郡家(きくぐうけ)はどこだ

2018年7月号

自然史・歴史・文化財等

2018年6月29日

埋蔵文化財hiroba
遺跡からのメッセージ
(公財)北九州市芸術文化振興財団
埋蔵文化財調査室 調査係長 中村利至久

 
 1996年度に実施された長野角屋敷(かどやしき)遺跡(小倉南区大字長野)の発掘調査において、幅約8センチメートル、長さ約36センチメートル、厚さ約6ミリメートルの木簡(もっかん)が出土しました。(図1)
 

図1 野角屋敷遺跡出土の木簡

図1 野角屋敷遺跡出土の木簡


 
 木簡とは文字の書かれた短冊状の板です。出土した木簡は下方が折損(せっそん)していましたが、そこに書かれていた文字を読み解くと、郡の長官である物部臣今継(もののべのおみいまつぐ)が、部下で税長(ぜいちょう)という役職にあった膳臣澄信(かしわでのおみすみのぶ)を役所に呼び出すための召喚状であることが分かりました。どうやら澄信は仕事をさぼって不始末をおこし、長官から直々に呼び出されたようです。
 「只今暁参向於郡家不得延怠」(この明け方に郡家に参向せよ。遅れてはならない)と命じられていて、至急に、そして遅刻しないようにと、わざわざ釘(くぎ)をさされています。身から出た銹(さび)とはいえ、澄信はさぞかし肝を冷やしたことでしょう。
 この木簡は、書かれた内容や同じ場所から出土した土器の年代から奈良時代末頃から平安時代初頭頃のものと考えられていて、当時の役人の具体的な名前や役所の活動について知ることのできる非常に貴重な資料です。
 この頃の日本は天皇を中心とした中央集権的な国家を形成しており、各地は国・郡・郷という段階的な単位で区分されていました。そして国や郡にはその地域を所管する役所が置かれていたのです。長野角屋敷遺跡を含む北九州市の東半部一帯は、豊前国企救郡に属していましたから、澄信は企救郡家に呼び出されたことになります。なお、この「郡家」というのが郡の役所のことです。
 1030(長元/ちょうげん3)年に記された『上野国(こうずけのくに)交代実録帳』によると、郡家は税として集めた米の倉庫である「正倉(しょうそう)」、政務が行われる「郡庁(ぐんちょう)」、宿泊施設である「館(たち)」、役人に食事を給するための「厨家(くりや)」という複数の施設群で構成されていたことが分かります。そしてこのようなあり方は、発掘調査で明らかになってきた各地の郡家の様相とも一致しています。また、立ち並ぶ建物群が方向を東西南北にそろえ、整然と配置されていた状況も確認されてきました。ちなみに澄信の役職「税長」とは正倉の管理者のことです。
 それでは企救郡家はどこにあったのでしょう。市内各地で数多くの発掘調査が行われてきましたが、実はまだ分かっていないのです。とはいえ、全くヒントがないわけでもありません。役所では多くの役人が働き、地域の人や物などの情報を文字を使って管理していました。そのため、役所周辺からは文字の書かれた遺物や硯(すずり)などの文房具、またベルト飾りの一部や緑釉(りょくゆう)陶器、越州窯系青磁(えっしゅうようけいせいじ)などの高級食器等、当時の役人以外はあまり使用しなかったものが出土するのです。 
 北九州市では小倉南区横代、長野、貫、朽網一帯にこれらの出土遺物が多くみられるという特徴があります。このことから、これらのどこかに郡家が存在するものと考えられてきましたが、近年、小倉北区城野の三郎丸遺跡において大量の墨書土器と緑釉陶器が出土したことで、少し状況がかわってきました。(図2)

 

図2 三郎丸遺跡第4地点出土の「廣」と書かれた墨書土器

図2 三郎丸遺跡第4地点出土の「廣」と書かれた墨書土器


 
 澄信が呼び出された企救郡の行政の中心、企救郡家はどこにあったのか。北九州市の古代を考える上で、興味深いテーマの一つといえるでしょう。
 

参考文献
前田義人編1999年『長野角屋敷遺跡』(財)北九州市教育文化事業団
前田義人1999年「長野角屋敷遺跡出土の「郡召」木簡について」『研究紀要』第13号
(財)北九州市教育文化事業団
山口裕子編2017年『三郎丸遺跡第4地点』(公財)北九州市芸術文化振興財団

 
〈埋蔵文化財の展示案内〉
・北九州市立埋蔵文化財センター
 〈小倉北区金田1の1の3 093(582)0941〉
 北九州市を掘る(89)
 「城下町小倉」から「軍都小倉」へ ―小倉城御用屋敷跡の調査から―
 小倉城御用屋敷跡から出土した江戸時代~近代の瓦、煉瓦、陶磁器など45点を展示
 常設展もあり

【入館料】
 無料

【開催期間】
 4月24日(火)~8月26日(日)まで

【開館時間】
 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
 ※毎週月曜日(休日の場合はその翌日)休館
 
・黒崎歴史ふれあい館
 〈八幡西区黒崎3の15の3黒崎駅横コムシティ1F〉
 常設展開催中/『城下町から宿場町へ~出土品が語る黒崎の歴史と文化~』
 『シュガーロード・発掘物語』

【入館料】
 無料 

【開館時間】
 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
 ※年中無休
 


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