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北九州市立文学館第26回特別企画展「まど・みちおのうちゅう」

2018年8月号

文学

2018年7月31日

CulCul特集
北九州市立文学館
学芸員 小野恵

 
 文学館では現在、「ぞうさん」、「やぎさん ゆうびん」などの童謡の作詩で知られる詩人のまど・みちおを紹介する特別企画展を開催しています。
 まど・みちお(本名・石田道雄)は、1909(明治42)年、山口県徳山町(現・周南市)に生まれ、10歳から37歳まで台湾で過ごしました。終戦後帰国し、児童雑誌編集の仕事をしながら、童謡詩を中心に創作を行います。50歳目前で退職しフリーになってからは、詩作や絵画制作に没頭し、国際アンデルセン賞作家賞を受賞するなど高い評価を得ました(まどの詩業の詳細は、前号「文芸」欄をご覧ください)。
 今回は、まどがどのような思いを持って詩や絵画を創作していたのか、展示資料とともにご紹介しましょう。

 

へりくつノート

へりくつノート
左から「へりくつあれこれ1」、「へりくつむにゃむにゃ2」、「へりくつ3」

 

○「へりくつノート」
 50代半ば頃から書き始めた「へりくつノート」(全3冊)が遺(のこ)されています。詩や絵画の創作についての考えや葛藤などが率直に記されています。まどは58歳の時に、初めての詩集『てんぷらぴりぴり』を刊行しました。当初、出版社からは童謡集を依頼されていましたが、まどの希望で詩集に変更されました。出版からまもない頃の「へりくつ3」には、次のような記述が見られます。

 子どものためにかくということではない。自分の為にかくのだ。それはおとなにも子どもにも読めるものなのだ。むしろ子ども語でかいた大人の詩なのだ。(略)なぜ大人のオレがオレの詩を子ども語でかかねばならぬのか。オレが詩と名づける世界は大人語ではとても構築できないことが多いからだ(※1)。
(68年11月17日)

 これまで主に書いてきた子どものための「童謡詩」との決別、「子ども語」で「詩」を書いていくことへの決意が記されます。同ノートでまどは詩を「ことばのカルワザ」とも表現し、「日本語の約束みたいなものにがんじがらめにされていない」(=「子ども語」)詩作を目指しました。
 さまざまな葛藤や思考を重ねながら、創作を行っていたことがうかがわれる資料です。

 

風のネックレス 1964(昭和39)年9月

風のネックレス 1964(昭和39)年9月
周南市美術博物館蔵

 

○まどの抽象画
 まどは80点あまりの抽象画を遺しています。その大半は出版社退職直後の51歳から55歳にかけて、集中的に描かれました。
 まどは「言葉を使う詩の場合は、ものの本質を見届けようといくら苦心惨憺(さんたん)しても、どうしたって名前や意味から自由になれない宿命みたいなもの」があるので、「絵のほうが詩よりラクに、自由自在に描ける」と随筆で述べています(※2)。視覚は「そのものずばりを見て感じる権利」を持っており、「見る自由」を守る「最後の砦(とりで)」が「抽象画」だと考えました。

 言葉の意味からの解放を希求したまどの思いがよく表れた詩があります。

 

 ボタンを
 しっているから ボタンなのだ
 ボタンに
 つくられているから
          ボタンなのだ

 ぼくたち
 にんげんに とって…

 せかいで 一ばんみじかい
 トンネルを
 でたりはいったり するのが
 しごとの…

 で なになのだろう ボタンは
 ボタンに とって…
 宇宙に とって…

 「ボタン」

 
 言葉以前の「存在そのもの」を捉えたいという思いや葛藤が、表現方法こそ違いますが「詩」と「絵」の表現に通底していることを、展示をとおして感じていただければと思います。

 

※1  参考: 図録『まど・みちお え てん』(2009年11月、周南市美術博物館)収録の松本久美子「詩人まど・みちお―100年の足跡」
※2  『いわずにおれない』(2005年10月、集英社)

 

Information
市制55周年記念
北九州市立文学館第26回特別企画展
「まど・みちおのうちゅう」

【開催期間】
 開催中〜9月17日(月・祝)

【開館時間】
 午前9時30分〜午後6時
 (入館は午後5時30分まで)

【休館日】
 月曜日(最終日9月17日は開館)

【観覧料】
 大人500円
 中高生200円
 小学生100円
 ※こども文化パスポートの適用あり

【お問合せ】
 北九州市立文学館
 北九州市小倉北区城内4の1
 093(571)1505


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