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戦うか。よりそうか。
2021年3・4月号
演劇・舞踊
2021年2月26日
演劇hiroba
演劇の街は、いま
大塚恵美子演劇事務所
代表 おおつかえみこ
古いドラマの再放送で、登場人物たちが、ビュッフェスタイルのレストランで、「あ、これおいしそう!」などと、ぺちゃくちゃお喋(しゃべ)りしながら幸せそうに料理を皿に取っているシーンがあった。その光景を見た瞬間「いや、これ、飛沫(ひまつ)飛びすぎてダメでしょ」と感じている自分を発見して驚いた。飲食店内での喫煙シーンを見て眉をひそめるのと似たような感覚かもしれない。人は環境に慣れていく。
コロナ禍がもたらした変化の中で、少しだけ明るい面を探るとすれば、さまざまなセミナーがオンラインで行われるようになったことかもしれない。地方在住者としてはありがたいことだ。そのうちの一つで、緊急事態宣言下の学校におけるオンラインでのドラマ活動について報告をしていたら、大学で教鞭(きょうべん)をとっておられる方に「しょせんそれは“仕方ないからやってる”ことであって、“こんな工夫で乗り切ろう”的な態度は捨てて、パフォーミングアーツは対面でなければダメなのだと声を上げなければ」と叱られた。確かにそうなのかもしれない、とも思う。それに対する答えを私はまだ獲得できていないでいるのだが。
さまざまに変化するコロナがらみの状況に呼応するように、演劇界でもさまざまなことがおきている。近隣では「嘉穂劇場」が、コロナ禍の影響で運営体制を変えざるを得なくなったという報道がなされた。1922年に建てられ、筑豊の文化の歴史を率いてきたともいえる劇場が集中豪雨で甚大な被害を受けたのは2003年。さまざまな人の支援を受け翌年には復活し、「認定NPO法人嘉穂劇場」がその運営を手掛けてきた。しかし、公演中止、観客減による経営難を乗り越えることができずに解散を決めたのだという。今後の経営については飯塚市を交えて協議中とのことだが、国の登録有形文化財にも指定されているこの劇場が今後どうなっていくのか、非常に気になるところである。
北九州では、「劇団青春座」の代表が井生定巳から和田正人に引き継がれた。20年に75周年を迎えた老舗劇団の今後の動きにも注目したい。青春座は5月29日・30日に新作公演『空翔(か)ける虎~河内一彦、日本初の訪欧大飛行へ~』(作:葉月けめこ)を北九州芸術劇場中劇場にて公演予定だ。
“先が見えない”ということからか、年度末に向けて、数カ月先まで告知されているだろう公演情報が今年はかなり少ない。以下はこの原稿を書いている時点での公演予定。読者の目に拙文が触れる際には上演済みとなっていることを祈りつつ紹介させていただく。
中でも注目したいのは、「飛ぶ劇場」の『ガギグゲゲ妖怪倍々禁』(作・演出:泊篤志/1月30日・31日)だ。新型細菌のパンデミックが起こった世界で、「菌の拡散源」とみなされ、迫害される妖怪たちの物語。12月に北九州芸術劇場小劇場で上演された作品を「久留米シティプラザCボックス」で上演予定だ。

飛ぶ劇場『ガギグゲゲ妖怪倍々禁』チラシ
枝光本町商店街アイアンシアターでは、2月11日に「日本劇作家協会九州支部 月いちリーディングin北九州」が開催される。今回は「若宮計画」の若宮ハルの『エウロパで君とお喋り』をリーディング上演し、ブラッシュアップのためのトークを開催する。
緊急事態宣言の影響で、同劇場では、「劇団C4」が、新作『遺品 のこされたもの』を、ここでも数回紹介させていただいている、「灯(あかり)プロジェクト」参加作品として上演する予定だったが、3月6日・7日に延期。また、2月13日には宮村耳々が『素晴らしい仮死』を上演する予定だったが、これも延期になった。
状況と“戦っている”作品も“よりそって前を向いている”作品もある。できる限り、劇場で、自分の目で確かめたい。

劇団C4『遺品 のこされたもの』チラシ
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