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銭貨が描く社会と暮らし

2018年5月号

自然史・歴史・文化財等

2018年4月27日

埋蔵文化財hiroba
遺跡からのメッセージ
(公財)北九州市芸術文化振興財団
埋蔵文化財調査室 室長 佐藤浩司

 

図1 中国銭(1 〜4)と寛永通寶(5)の拓本
   (小倉城二ノ丸家老屋敷跡出土ほか)

 

 遺跡を発掘すると時々、銅製の丸いお金が出土することがあります。考古学ではそれを「銭貨(せんか)」と呼びますが、それらは直径が2・3センチメートルほど、今の十円玉くらいの大きさで中央に方形の孔(あな)が開いていますが、土に埋まった状態で見つかるため、注意しないと見逃す可能性もあります。しかし、たいていは割れた土の間に輪郭の一部が覗(のぞ)いていたり、青く錆(さ)びた表面がスタンプ状に土に残っていたりするので、確認できます。
 最初に銭貨を発掘したときは、なぜこんな大事なものが土に埋もれているのか、その意味が分かりませんでした。しかし、いろいろ調べてみると、誰かが不注意で落とした銭貨だけでなく、故意に埋められた銭貨(写真1)や、おまじないやおまつりごとに使われる銭貨、ばらまかれた銭貨、亡くなった人とともにお墓に入れられる銭貨など、その使われ方はさまざまです。銭形平次は悪人に投げ付けるのに銭貨(寛永通寳/かんえいつうほう/図1の5)を利用しました。

 

写真1 中国銭が94枚ずつ束ねられていた

写真1 中国銭が94枚ずつ束ねられていた
     (室町遺跡出土)

 

 お金といえば幼いころ、五円玉や十円玉を道端で拾い喜んだものの、警察に届けようかどうしようかと真剣に悩んだことを思い出しました。
 そもそも銭貨は、経済的機能を持ち、商品獲得の手段として用いられるもので、古代世界では貝類、牛、石、布などが物品貨幣として登場しました。日本では中国唐の時代の律令(りつりょう)制度を導入する過程で銭貨の鋳造も開始され、7世紀末の「富本銭(ふほんせん)」を皮切りに、「和同開珎(わどうかいちん)」をはじめ皇朝十二銭(こうちょうじゅうにせん)が奈良~平安時代に造られましたが、律令体制の崩壊や流通経済の行きづまりなどから、その生産が中止されました。
 しかし、中世になると商業活動の隆盛や中国商人の来航などにより、博多を中心とする都市部などでは、宋銭、元銭、明銭が大量に日本に流通しはじめました(図1の1~4)。貨幣経済は農村部にも浸透しはじめ、中世の遺跡を発掘すれば1、2枚は必ず見つかることも分かってきました。
 そして、銭貨の出土は別の意味で大きな発掘成果をもたらしたのです。つまり、銭貨が出土することによって、それが最初に造られた年代(初鋳年/しょちゅうねん)が判明するため、同じ土層から見つかった土器や陶磁器、木製品や人骨などの年代をある程度は推測できるという利点です。しかし、その銭貨が長い間使われ続けていれば、他の遺物との同時性はだんだん薄れていきます。
 今、あなたの財布には何年製造の硬貨が入っていますか。私の財布にあった21枚の硬貨は1963(昭和38)年の一円玉から2015(平成27)年の百円玉が含まれていました。ところが、今年は2018(平成30)年。ですから、発掘調査で土中から一緒に出土した銭貨でも55年以上の年代幅が存在します。銭貨が造られ、使われ、役割を終えて新しい銭貨と入れ替わっていくのは、使用や破損の頻度や製造量など社会的要因に左右される部分が少なくない、ということですね。
 江戸時代のお墓からは、しばしば「寛永通寳」という銭貨が6枚出土します。三途(さんず)の川の渡し賃を死者に持たせてあの世で成仏できるように、と願う習俗(しゅうぞく)で、この銭貨を「六道銭(ろくどうせん)」と呼んでいます(図1の5)。小倉城下町の調査でも多数の副葬例が見つかっていますが、銭貨の役割ってさまざまですね。
 発掘調査で出土する銭貨はそのほとんどに文字が記されていることにより、製造年代や製造地、また成分の違いから来る需要と供給の関係、中国本土での流通事情などとともに、「使用の場」を復元するのにも多くの情報を身にまとっているのです。
 こうした意味でもお金は大切にしたいですね。

 

※参考文献
小畑弘巳「Ⅳ都市の暮らし 銭貨」『中世都市博多を掘る』海鳥社 2008年
櫻木晋一『貨幣考古学の世界』考古調査ハンドブック15 ニューサイエンス社 2015年

 

〈埋蔵文化財の展示案内〉
・北九州市立埋蔵文化財センター
 〈小倉北区金田1の1の3 093(582)0941〉
 北九州市を掘る(89)
 『 城下町小倉」から「軍都小倉」へ ―小倉城御用屋敷跡の調査から―
 小倉城御用屋敷跡から出土した江戸時代~近代の瓦、煉瓦、陶磁器など45点を展示
 常設展もあり

【入館料】
 無料

【開催期間】
 4月24日(火)~8月26日(日)まで

【開館時間】
 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
 ※毎週月曜日(休日の場合はその翌日)休館

・黒崎歴史ふれあい館
 〈八幡西区黒崎3の15の3黒崎駅横コムシティ1F〉
 常設展開催中/『城下町から宿場町へ~出土品が語る黒崎の歴史と文化~』
        『シュガーロード・発掘物語』

【入館料】
 無料

【開館時間】
 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
 ※年中無休


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