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開館20周年記念特別企画展「清張オマージュ展」
2018年8月号
文学
2018年7月31日
文芸hiroba
清張アラカルト
北九州市立松本清張記念館
学芸員 柳原暁子

開館20周年記念 特別企画展『清張オマージュ展』チラシ
さあ、いよいよ始まりました「清張オマージュ展」。
今年で開館20周年を迎える松本清張記念館では、春からさまざまな記念事業を開催しています。現在開催中の企画展「清張オマージュ展」も、ちょっと特別な趣向の企画展となっています。
「オマージュ」(hommage)とは、フランス語で「尊敬、敬意」の意味です。創作の分野においては、尊敬する作者や作品を、引用したり連想させることを指します。
今回の企画展は、松本清張へのオマージュ作品を集めたものです。通常は、清張作品を掘り下げたり、作家清張について調査したことを紹介するのが当館の展示なのですが、今回は、清張以外の作者がずらりと並んでいます。
一、文学
小説を読んでいると、松本清張の名が突然出てきてびっくりすることがあります。皆さんもそういう経験ありませんか? 小説家にとって清張は大先輩であり、彼らは清張の読者でもあります。その像は人によって違うのでしょうが、清張が文学において、ある象徴となっているのは確かです。それは、時代であったり、ベストセラー作家としての顔であったり、重厚な作品世界であったり……思わず「これって清張だよね」と言いたくなるような瞬間、私たちにもありますよね。本展では主要なオマージュ作品しか取り上げることができませんでしたが、村上龍「トラベルヘルパー」や、恩田陸「砂丘ピクニック」、東野圭吾『白夜行』、柚月裕子『盤上の向日葵』などを紹介しています。
二、漫画
松本清張は、有名な漫画にも登場しています。
長谷川町子の『いじわるばあさん』『エプロンおばさん』や、水木しげるの『コケカキイキイ』には、実名(本人役)で登場します。いずれも、時事的な話題を取り入れた内容で、清張は社会的な発言をする作家であり、著名人として描かれています。もちろん、漫画としての面白さにも注目してください。清張と共に、当時の有名作家たちも登場していますよ。
西岸良平の『鎌倉ものがたり』には、〈松本清一〉という大御所作家が登場します。この方、お顔はどう見ても清張先生です。違っているのは、鎌倉に住んでいること、お酒を飲むこと、くらいでしょうか。『ゼロの栄転』という本を上梓(じょうし)されています。
三、映画
清張作品は、〈映像的〉であるといわれ、そのことが映画人を魅了した理由の一つでした。
清張映画は、現在の映画人にも影響を与えています。今回、オマージュ作品として、最も多く推挙されたのが、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年/東宝)でした。脚本家・君塚良一から寄せられた直筆コメントも展示します。
その他、清張を敬愛するイラストレーターのみうらじゅん、黒田征太郎、山藤章二らが手掛けた作品(絵画や文章)も必見です。
さまざまに語られ、描かれた「清張」や「清張作品」を通して、松本清張がいかにクリエイターたちを刺激し触発したか、また、いかに時代のアイコンとして存在感を放っていたかを、感じていただければ幸いです。ぜひ足をお運びください。
Information
開館20周年記念 特別企画展 「清張オマージュ展」
【開催期間】
7月21日(土)~10月31日(水)
【開館時間】
午前9時30分~午後6時(入館は午後5時30分まで)
【会場】
松本清張記念館企画展示室
【入場料】
常設展示観覧料
一般500円(400円)
中高生300円(240円)
小学生200円(160円)
( )内は30名以上の団体料金
※こども文化パスポートの適用あり
【お問合せ】
北九州市立松本清張記念館
北九州市小倉北区城内2の3
093(582)2761
ホームページアドレス
http://www.kid.ne.jp/seicho
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