図2 弥生時代終末期の土器群の一例(埋蔵文化財センター展示遺物)

自然史・歴史・文化財

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高島(たかしま)式土器の行方〜北九州市域の弥生時代終末期の土器を考える〜

2017.5月号

埋蔵文化財hiroba
遺跡からのメッセージ
(公財)北九州市芸術文化振興財団
埋蔵文化財調査室 調査係長 中村利至久

 皆さんは「高島式土器」という名前をご存じでしょうか。これは、1972(昭和47)年に発掘調査が行われた、小倉南区下貫2丁目(旧大字貫字高島)に所在する高島遺跡にちなんで付けられた土器群の名前です。 
 土器の形や種類は時代とともに変化していきます。また、この変化には地域ごとに特徴があることが分かっています。考古学ではこの変化や地域性を調べ、その土器がいつの時代のどの地域に属するものかを検討します。 
 高島遺跡を発掘した研究者たちも、出土した土器群の検討を行いました。その結果、これらの土器群がそれまで未確定であった東北部九州の弥生時代終末期を代表するものと判断したのです。そして、この新たな土器群の名称を、遺跡名を冠して「高島式」と命名しました。ちなみに、このように良好な資料群が出土し、土器の名前になるような遺跡を「標識(ひょうしき)遺跡」と呼びます。 
 ともあれ、この認定以降、北九州市域では遺跡から高島式土器と同じ形態の土器が出土した場合、その遺跡を弥生時代終末期の遺跡として取り扱ってきました。 
 ところで、高島遺跡出土の高島式土器は、祭祀(さいし)行為のために掘られた穴(土坑/どこう)の底から一括投棄もしくは据え置かれたような状態で見つかりましたが、その土坑の形状は一回で掘られたと考えるには不自然な形をしています。このため、調査当初から複数回の掘り替えがあった可能性が指摘されてきました。その形は図1に色分けして示したように、少なくとも三つの土坑が重なり合っているように見えます。また、土器群もこれに対応するようにいくつかのまとまりになっていて、複数回の祭祀行為の結果、このような状態になったのではないかとの指摘もなされています。

図1 高島遺跡の祭祀土坑(土坑、遺物ともにいくつかのグループに分かれているようにみえる)

 その場合、問題になるのはその時間的な間隔です。それが「弥生時代終末期」という時間幅に収まらないほど長いものであったなら、高島式土器とこれを基準に組み立てられてきたこの時期の遺跡の評価は変わってくることになります。そしてそれは、そのまま北九州市域における歴史的環境の評価にも影響を与えます。弥生時代終末期はその名の通り古墳時代へと移り変わっていく重要な時期ですから、その影響は大きなものとなるかもしれません。 

図2 弥生時代終末期の土器群の一例(埋蔵文化財センター展示遺物)

 高島式土器は果たして弥生時代終末期単一時期の土器なのか。当調査室の前室長である前田義人は自身の研究の中で、この土器群が単一時期のものではないとの指摘を行っています。 
 筆者も、最近になってこの問題について考える機会を得ました。発掘調査から45年を経た現在、当時とは比較にならないほど発掘調査事例は増え、新たな発見や研究成果が蓄積されています。その視点で改めて高島遺跡出土の土器群を眺めてみたとき、あくまでも予察の段階ですが、少なくとも三時期にわたる土器群のように見えます。 
 「高島式土器」の正体やいかに。今年はこの問題について少し腰を据えて考えてみたいと思っています。

参考資料
・北九州市埋蔵文化財調査会編1976年『高島遺跡』古文化談叢(だんそう)第3集
・前田義人1988年「高島式土器の終焉」『研究紀要』第2号(財)北九州市教育文化事業団
・栗山伸司編2005年『高島遺跡第2地点』北九州市教育委員会
・中村利至久2017年「北九州市域の古式土師器について」『九州島における古式土師器』九州前方後円墳研究会



〈埋蔵文化財の展示案内〉

・北九州市立埋蔵文化財センター
 〈小倉北区金田1の1の3 093(582)0941〉
・北九州市を掘る(86) 埋蔵文化財速報展
  『紫川中流域の弥生ムラー上徳力遺跡第27地点ー』
    弥生時代の土器や石器、お祭りに使うミニチュア土器など約65点を展示
    常設展もあり

【入館料】
 無料 

【開催期間】
 8月20日(日)まで

【開館時間】
 午前9時〜午後5時
 (入館は午後4時30分まで)
 ※毎週月曜日(休日の場合はその翌日)、年末年始は休館

・黒崎歴史ふれあい館
  〈八幡西区黒崎3の15の3黒崎駅横コムシティ1F〉
 常設展開催中
  『城下町から宿場町へ〜出土品が語る黒崎の歴史と文化〜』
  『シュガーロード・発掘物語』

【入館料】
 無料 

【開館時間】
 午前9時〜午後5時
 (入館は午後4時30分まで)
 ※年中無休

【このコーナーの次回掲載予定は7月号です】