平成29年度前期特別企画展

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平成29年度前期特別企画展「清張と鉄道 ―時代を見つめて 小倉発1万3500㌔」

2017.8月号

文芸hiroba
清張アラカルト 
北九州市立松本清張記念館
事務局 企画係主任 下澤聡

 松本清張記念館では、8月から「清張と鉄道 ―時代を見つめて 小倉発1万3500㌔」と題した企画展を開催します。
 皆さんは「清張と鉄道」というテーマを聞いて、どのような内容を思い浮かべますか? やはり『点と線』の「犯人が時刻表を駆使して偽のアリバイを作るトリック」を連想する方も多いのではないでしょうか。『砂の器』や『ゼロの焦点』といった有名な「清張ミステリー」作品でも、鉄道が重要な役割を果たしています。
 路線図や駅名、車窓風景や車内での人間模様といった鉄道に関係する描写が登場するのは、こうしたフィクション作品に限りません。清張自身の体験を語ったエッセイや「自伝的小説」と位置付けられる作品群からも、鉄道にまつわる数々のエピソードが読みとられます。
 これらには、当時の日本を克明に描写することでリアリティを追求するという、作家やジャーナリストとしての清張の意図が現われているのだと言えます。しかしそれだけではなく、やはり鉄道や旅そのものに対する、彼の純粋な愛着や憧れといった感情も映し出されているのではないでしょうか。

 執筆当時や作品の舞台となった時代には当たり前であった「鉄道風景」の数々も、清張が没して四半世紀がたとうとする現在では失われつつあります。残念なことに、当時を経験していない若い世代の読者にとっては、なかなか実感が湧かないような作中描写が多くなっているのも事実です。
 硬く垂直な背もたれのボックスシートの狭い空間で、見知らぬ他人同士が膝のぶつかりそうな距離で差し向かい、長距離・長時間の移動を共にする。窓越しに買った駅弁やミカンを頬張る人、ちょっとぜいたくをしたくて食堂車の順番を待つ人、すぐ脇に取り付けられた灰皿のふたを無造作にいじりながら流れる景色をぼんやり眺める人、疲れて肘掛けに頭を擦り付けながら眠る人…そこにはきっとそんな光景があったはずで、もちろん誰も携帯電話などいじってはいなかったはずです。

 今回の企画展では、そんな時代の鉄道と清張作品の両方についてご紹介していきたいと思います。清張の生涯と九州の鉄道の歩みを対比した年表や、今回のサブタイトルにもなっている総計1万3500キロメートルにおよぶ作中登場路線をまとめた図、そして実際に使用されていた座席を配置し車内を再現したセットなど、楽しい展示もたくさん用意しています。視覚的・体感的に「あの頃」を味わうことで、年配の方々にとっては懐かしく、若い世代の方々にとっては新鮮で貴重な体験ができるよう工夫を凝らしました。もちろん、清張ファンの方には「あの作品の登場人物はこんな感じの列車に乗っていたのか…」と、鉄道ファンの方には「あの路線について松本清張はこんな風に描いていたのか!」という風に、それぞれの視点からの感慨や発見もあることでしょう。

 小倉発・清張鉄道、間もなくの発車です。皆さま、お乗り忘れの無いようご注意ください。

平成29年度前期特別企画展ポスター



Information
平成29年度前期特別企画展
清張と鉄道 ―時代を見つめて 小倉発1万3500㌔

【開催期間】
 8月1日(火)〜10月31日(火)

【開館時間】
 午前9時30分〜午後6時
 (入館は午後5時30分まで)

【会場】
 北九州市立松本清張記念館地階企画展示室

【入場料】
 常設展示観覧料に含む
 常設展示観覧料 
 一般500円 
 中高生300円 
 小学生200円
 ※こども文化パスポートの適用あり

【お問合せ】
 北九州市立松本清張記念館
 北九州市小倉北区城内2の3 
 093(582)2761