図1 ヤマザキコレ『魔法使いの嫁』 ©ヤマザキコレ/マッグガーデン

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魔法使いの嫁 原画展 in 北九州 魅力あふれるマンガ原画たち

2017.6月号

CulCul特集
北九州市漫画ミュージアム
専門研究員 表智之

 マンガの「ミュージアム」=美術館にとって、マンガの原稿、いわゆる「原画」は、もっとも重要な資料の一つです。単行本や雑誌は国会図書館などでも保存されていることや、膨大な量の原画を作家が個人で管理するのは難しいことなどから、原画を整った環境で保存し、展覧会など積極的に活用していくことは、ミュージアムにしかできない社会的使命と言っていいでしょう。当館でも、関谷ひさし作品約1万6000点や、陸奥A子作品約4000点など、地元ゆかりの漫画家の原画を作家あるいはご遺族からお預かりして、保存しています。 
 しかし原画は、日本画や西洋画などに比べてサイズが小さいことや、雑誌や単行本に印刷して初めて完成する、いわば中間制作物であることなどから、しっかりした美術展示室にそぐわない面が実は少なくありません。原画を額に入れてただ飾るだけでは、展示室ががらんとして寂しくなってしまいます。また、原画には多くの場合、制作や出版の工程で生じたメモ書き、作家からアシスタントへ、あるいは編集者から印刷所への指示などがそのまま残っており、美的観点からはあまりよろしくない部分もあります。
 そのため、原画を中心に展覧会を企画・構成する際にはいろいろな工夫をします。一つは、壁の色を変えたりイラストを拡大印刷した壁紙を作ったりして、原画を鑑賞する雰囲気づくりをすること。6月3日(土)から7月17日(月・祝)まで開催する「魔法使いの嫁 原画展 in 北九州」(図1)では、イングランドを舞台とした魔術ファンタジーである作品の世界観に合わせて、壁の色は暗色を基本とし、不幸な生い立ちを持つ少女と異形の魔法使いの心が通じ合うシーンなどは明色の壁にしてアクセントをつけています。複雑な陰影で奥行きを感じさせるヤマザキコレの卓抜した筆力が、いっそう引き立つことでしょう。

図1 ヤマザキコレ『魔法使いの嫁』 ©ヤマザキコレ/マッグガーデン

 もう一つの工夫は、作家の存在を浮かび上がらせること。原画に残された書き込みなど絵以外の要素は、その原画が作家の、そしてアシスタントや編集者など作家を支える人々の入念な手仕事で成立していることを、生々しく感じさせてくれます。そこに注目し、舞台裏での作家の苦心や工夫にも焦点を当てるのです。

図2 北条司『シティーハンター』 ©北条司/NSP 1985

 「シティーハンターのすべて」展〔図2・7月29日(土)から9月24日(日)まで〕では、キャラクターの魅力や名場面の紹介だけでなく、6年間の連載期間中に作者・北条司の描画力が研ぎ澄まされていく過程にも注目します。また10月7日(土)から12月10日(日)まで開催する竹宮惠子の展覧会(図3)では、代表作『風と木の詩』の構想を描きつづり、連載が実現するまで5年間温めていたクロッキーノートを展示し、新たな挑戦にかける作家の意気込みを感じ取っていただきます。

図3 竹宮惠子『風と木の詩』「ミサのあと」2016年 ©竹宮惠子

 さらに来春には「萩尾望都SF原画展~宇宙にあそび、異世界にはばたく~」〔2018年3月17日(土)から5月20日(日)まで〕も開催。個性はそれぞれ異なりますが、原画を間近で眺めると思わずため息が出るような、気迫と筆力にあふれた作家ばかりです。どうぞお楽しみに!



Information
魔法使いの嫁 原画展 in 北九州
【会場】
 北九州市漫画ミュージアム企画展示室
 (あるあるCity5F)

【開催期間】
 6月3日(土)~7月17日(月・祝)

【開館時間】
 午前11時~午後7時
 (入館は午後6時30分まで)

【休館日】
 毎週火曜日

【入館料】
 一般500円 
 中高生300円 
 ※小学生以下無料
 ※詳しくは北九州市漫画ミュージアムのホームページをご覧ください 
    http://www.ktqmm.jp/       

【お問合せ】
 北九州市漫画ミュージアム 
 093(512)5077