演劇

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中学校演劇の現状

2017.10月号

演劇hiroba
演劇の街は、いま 
大塚恵美子演劇事務所 
代表 おおつかえみこ

 中学校演劇がピンチだ。
 7月29日に戸畑市民会館で行われた北九州市中学校文化連盟主催『北九州市中学校演劇部合同発表会2017』の今年度の参加校は4校。上演作品は以下の通り。

○則松中学校『いちご・いちえ』

則松中学校『いちご・いちえ』舞台写真

 

○上津役中学校『あなたのために』

上津役中学校『あなたのために』舞台写真

 

○篠崎中学校『Treasure』

篠崎中学校『Treasure』舞台写真

 

○広徳中学校『Alice〜世界がアリスの夢だったら』

広徳中学校『Alice〜世界がアリスの夢だったら』舞台写真 写真提供:ワールドフォト池口

 

 どの作品もよく工夫された熱のあるものだった。私が“ピンチ”と書いたのは演劇部の数だ。
 北九州市内の中学校の数は、公立、私立含めて72校。もちろん、この大会に出場していない演劇部もあるし、「生徒会」や「クラス演劇」といった形で演劇に取り組んでいる学校もあるので、“ピンチ”とはやや大げさな書き方かもしれない。ただ、北九州市中学校文化連盟としては、今後の演劇部の展開に関して不安を抱えている、というのは事実のようだ。
 これにはいろいろな理由がある。演劇はとんでもなく面倒くさい手順を踏んで完成していく芸術だ。ワークショップで中学生と触れ合う機会も多いが、誰かと一緒に何かを創り上げていく作業になんとなく恐れをなす生徒が増えてきているのではないか、それが「演劇部離れ」を引き起こしているのではないかとも感じる。
 また、「指導者の不足」も理由の一つに挙げられるだろう。高校演劇ならば、生徒に任せる形での活動がある程度成立するが、中学校ではどうしても「指導」が必要になる。演劇経験がある、演劇に興味がある、または演劇の持つ教育的意義を理解している大人がいなければ、演劇部の運営が難しいのが実情だ。今まで顧問を務めていた先生が管理職になったり、転勤したりすると、部活を存続させていくのが困難になり、自然消滅していく演劇部も多いのだという。
 現在、上津役中学校のように、地元の演劇人を講師に迎えて指導をしてもらっている学校もある。文部科学省は、2017年度より、「中学校におけるスポーツ、文化、科学等に関する教育活動(中学校の教育課程として行われるものを除く。)に係る技術的な指導に従事」する“部活指導員”を学校職員として迎えることができる制度を実施しているので、この制度をうまく利用すれば、現在の状況が改善される可能性も高い。
 難しいのは、学校における演劇の指導は、単に「技術の伝達」だけでは済まないということだと思う。
 前述した“部活指導員”には研修制度があり、「学校の設置者及び学校は、部活動指導員に対し、事前に研修を行うほか、その後も定期的に研修を行う。研修は、部活動が学校教育の一環であることなど部活動の位置付けと教育的意義、生徒の発達の段階に応じた科学的な指導、生徒の人格を傷つける言動や体罰の禁止等について、十分に理解させるものとする。」と定められている。
 個人的な意見として理想を言わせていただけると、小学校の頃からもっと積極的に演劇を教育課程の中に取り込んでいけば、「指導者」不足の状況下にあっても、中学生が自主的に作品を創作できるようになるのではないだろうかとも思う。教育と演劇をつなげるスキルを持った演劇人の数も増えていない。その育成も必須だろう。しかも、ぐずぐずしてはいられない。