侘び助『苦海浄土』(福岡公演時の様子)

演劇

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9月の劇場あれこれ。

2017.11月号

演劇hiroba
演劇の街は、いま 
大塚恵美子演劇事務所 
代表 おおつかえみこ

 9月の北九州の劇場の様子を書こう。
 まずは、「飛ぶ劇場」が『生態系カズクン』(作・演出:泊篤志/9月8日~10日/北九州芸術劇場小劇場)を上演した。「飛ぶ劇場」は今年で30周年を迎えた。この作品は、1998年に「第3回劇作家協会新人戯曲賞」を受賞した初期代表作の一つだ。初演および3回の再演を経て、今回は5回目、14年ぶりの公演となる。同じ時期に劇団を立ち上げ、北九州の演劇界のさまざまな“事件”を共に体験してきた者としては、非常に感慨深い公演だった。
 同じ週末、八幡東区の「デルソルカフェ」では、「侘(わ)び助」が朗読ライブ『苦海(くがい)浄土 石牟礼道子』(原作:石牟礼道子/構成:鳴(めい)/9月9日)を上演した。「侘び助」は、語りの萬田陽子と音楽の上田たけしで構成されたユニット。飯塚市・直方市に拠点を置きつつ、市外、県外でも積極的に活動を行っている。萬田は2015年に「第3回久留島武彦顕彰 全国語りべ大会」にて最優秀賞を受賞。上田は音楽だけでなく、エフエムキタキューのラジオ番組にも出演するなど、多彩な二人である。しっかりとした語りと、即興で奏でられる音楽のバランスが心地良い作品だった。

侘び助『苦海浄土』(福岡公演時の様子)


 月末には、弦巻楽団が『サウンズ・オブ・サイレンシーズ』(作・演出:弦巻啓太/9月23日・24日/枝光本町商店街アイアンシアター)を上演。2016年6月にアイアンシアターで初の北九州公演を行った、札幌を中心に活動している劇団である。今回の作品は2016年に初演されたもの。「再演ツアー」として三重、大阪、北九州と3カ所での上演。こうして県外の劇団が“帰ってきて”くれるのは大変うれしいことである。とある劇団関係者が「アイアンシアターは、劇団が拠点としている場所がどこであろうと、“ホーム”だと感じさせてくれる場所だ」と言っていたのを思い出す。そう感じてくれる劇団がどんどん増えていけばいいなと思う。

弦巻楽団『サウンズ・オブ・サイレンシーズ』チラシ

 

 同じくその週末に、「劇団C4」が第24回公演『三日月探偵社 CASE FINAL~下弦の月~』(作・演出:大福悟/9月22日~24日/旧古河鉱業若松ビル)を上演した。何度かここでも紹介させていただいたが、この劇団の大きな特徴の一つが、複数の作品を通して、登場人物の成長や変化を追いかける「シリーズ物」である。まるでテレビドラマや映画のような楽しみ方ができるので人気もある。今回の作品は、ここ数年取り組んでいる『三日月探偵社』シリーズの最終回。ファンにとっては寂しいかもしれないが、反面、次回の「シリーズ」がどのようなものになるのか、待ち遠しいのではないだろうか。
 さて、枝光本町商店街アイアンシアターでは、少し変わった作品が上演された。東京を拠点とする劇団「Platform」の『いと、といと。』(9月29日~10月1日)である。この劇団は「次世代にインプロ文化をつなぐ」をコンセプトに、2010年8月に結成された“即興パフォーマンスチーム”である。インプロというと、短いゲームの連続で構成されたショーを上演する団体が多い中、この劇団は、あらかじめ世界観や人物設定を決めておいて、そこへ観客のアイディアを盛り込みつつ「一つの物語」として上演していく形をとっているのが特徴だ。今回は、観客と登場人物が協力して“運命の恋人”をさがすという趣向。「脚本」と「即興」のハイブリッド具合が興味深かった。
 「演劇の街」の9月は、演劇公演が多くなる「芸術の秋」の始まりにふさわしい勢いを感じさせる月だったと思う。