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海峡演劇祭2017

2017.12月号

演劇hiroba
演劇の街は、いま 
大塚恵美子演劇事務所 
代表 おおつかえみこ

 『海峡演劇祭』が今年も開催される。期間は12月2日から23日まで。関門海峡ミュージアム(海峡ドラマシップ)多目的ホールにて。ラインナップは以下の通り。
○ぐにゃり
『アクアリウム』(作・演出:谷岡紗智/12月2日)
○だらく舘
独り芝居 芸人列伝 第三伝 『贋作(がんさく)・ミスワカナ』(作・演出:秋山豊/12月9日・10日)
○海峡プロジェクト
朗読 貝原浩チェルノブイリスケッチ『風しもの村』(構成・演出:たにせみき/12月16日)
○映画『隣人のゆくえ』
上映&トークショー(監督:柴口勲/12月23日)
(開演時間、入場料金等は、演劇祭の公式ホームページでご確認いただきたい。   
 http://t-etc.net/kaikyo_engekisai.htm
 この演劇祭は、毎年一つのテーマ、キーワードに沿った作品が上演されるのが特徴。今年は“生きるということでの闘い”である。
 2012(平成24)年度の九州戯曲賞を受賞した谷岡紗智が率いる劇団「ぐにゃり」の新作を皮切りに、興味深い作品が並んでいる。
 「だらく舘」の“贋作”シリーズは、時代と共に生きた芸人たちの人生の明暗を一人芝居で表現したものだ。1950年代に一世を風靡(ふうび)した芸人、トニー谷や、“伝説のストリッパー”一条さゆりなどのレパートリーがある中、今回は昭和の初めから戦中を駆け抜けた漫才師、ミスワカナを描いた作品を上演する。

『贋作・ミスワカナ』

 

 それに続く「海峡プロジェクト」による『風しもの村』の朗読はまさにこの演劇祭でしか見られない座組だ。
 興味深いのは「劇団青春座」で活躍し、退団後も、中学校演劇部の指導、朗読、そして最近、演劇集団「九州:役者組」を立ち上げるなど、幅広い演劇活動を続けている江口之章と、「演劇作業室 紅生姜」の野口和夫というキャスティング。また、演奏で参加する谷本仰に“ヴァイオリン他”という“他”のただし書きが付いているところだ。クラシック、タンゴ、インプロヴィゼーションなど、さまざまなジャンルの音楽を、アコースティックとエレキの2種類のヴァイオリンのみならず、身の回りのものを駆使し、楽器として演奏する彼が、どのように朗読に絡んでいくのか、期待がふくらむ。
 貝原浩の『風しもの村』の原画を見たことがあるが、かなり大判な、細かく丁寧に書き込まれた迫力のある絵だった。今回はご遺族の許可を得て作成したデジタルデータと共に朗読が行われるとのこと。美術好きの方にもぜひお勧めしたい。
 トリを飾るのは、映画監督、柴口勲が、梅光学院中学校・高等学校の生徒と一緒に製作した映画『隣人のゆくえ』である。両親が離婚して、気持ちが不安定になっている女子高生が、ある日、学校の古い校舎で練習をしている“ミュージカル部”に出会う。生き生きとして、それでいてどこか儚(はかな)げなミュージカル部の少女たちと主人公の女子高生のひと夏の日々を描いたこの映画は、作曲や振り付け、撮影も生徒が行った結果、その素人ならではの“ぶれ”が内容とうまくマッチした“美しくて、そして少し恐ろしい”作品となっている。

『隣人のゆくえ』

 

 非常に個人的な感想ではあるが、「海峡演劇祭」は、コンテンツの多様性を楽しむ“お祭り”ではなく、複数の作品を観(み)て、その中から観客自身が“縦糸”を発見する催しであると思う。
 真摯に生きることもまた、世の中の“理不尽”と戦う一つの方法であるのではないか、という思いを込めて掲げられた“生きるということでの闘い”。このテーマが、4本の作品をどう結んでいるのか、実際に会場で確かめてみていただきたい。